都内の大学でウェイトリフティング部に入ったSさんは、高校時代から別の競技でインターハイに出るほど運動神経が良かったが、大学でマイナースポーツを選んだのは大正解だったと振り返る。
「ウェイトリフティングは、とにかく競技人口が少ないため、始めてすぐに『東京都○位』『全国大会出場』などの肩書が手に入ってしまいました。さらに部で渉外活動をしていると、オリンピックのメダリストや政治家、大学教授などに会うこともあり、そういった方々の口利きもあって、就職活動はトントン拍子で希望する企業から内定をもらえました」
一方で、卒業すれば、学生をサポートする立場に回らなくてはいけないことも多い。ボート部だったNさんが言う。
「学生時代は月3万円の寮費で生活できましたが、卒業したら今度はサポートする側になり、OB会費として、毎月1万円を払わなくてはいけません。基本的には“死ぬまで”です。義務ではありませんが、自分が先輩からサポートしてもらったのですから、今のところは払い続けています。実業界で成功したOBの中には、100万円単位で寄付する人もいます」
ウェイトリフティング部だったSさんも、受けた恩を返す作業は怠っていない。
「時には部員が本当に少ない学年もあるので、卒業から10年以上経っても、合宿や大会に顔を出すことがあります。ある程度の人数がいないと合宿の効果が上がりませんし、大会で応援する人間がいないのは気の毒ですから」
合気道部だったIさんも、飲み代を出したり、合コンをセッティングしたりしているのだとか。Iさんはこう語る。
「確かに卒業後も部と関わるのは面倒だと思う瞬間もありますが、部員が何十人もいるわけではありませんし、マイナースポーツを選んだ連帯感が強くあるので、やっぱり後輩は可愛いです。同じ釜の飯を食べた関係は強固で、連絡先が分からなくなってしまうこともありませんし、披露宴では演武を披露して、非常に盛り上がります。一生付き合う仲間でしょうね」
“就職活動のためにマイナースポーツを選ぶ”という姿勢では長続きはしないだろうが、マイナースポーツなりの魅力はあるということ。無気力に過ごすぐらいなら、ひとつの青春の過ごし方として検討してみる価値はありそうだ。