1.6兆円を省くことができる
一方、国内事情もある。1つは人口減少だ。国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、2030年に1億1913万人だった人口が全都道府県で減少し、2045年には1億642万人になる。これは、7割以上の市区町村で20%以上の人口が減る計算だ(対2015年比)。
当然ながら労働力人口も減少し、2065年には65才以上の高齢者の割合が約4割となるのに伴い、労働力人口はおよそ5割にまで減る。
「労働力人口が減ると、今のような便利な生活を維持するのが難しくなるでしょう。そうなると、これまで人間が行ってきた作業を技術によって効率化していく必要があります。その一環がキャッシュレス化なのです」
たとえば買い物をする時のことを考えても、キャッシュレス決済ならば、代金やおつりの受け渡しがなくなり、レジにかける人手を減らせるであろう。
さらには、キャッシュレス化によって、経費の大幅な減額も見込まれる。現金流通時、銀行であればATMの設置費が、流通・サービス業であればレジ締め作業の人件費などがかかり、すべてを足すと年間約1.6兆円ものコストがかかるという試算もある。キャッシュレス決済が普及すれば、これらをカットできるというのだ(表参照)。メリットは消費者側にもある。
「ATM利用時にかかる手数料がなくなるという金銭的メリットが生まれますし、窓口での待ち時間が減るといった時間的・体力的な負担の軽減も見込めます」
※女性セブン2019年5月9・16日号