せっかく「妻の権利」が充実するのに、一歩間違えると、家族が大炎上しかねない──今回の「相続の法改正」はそんな危うさをはらんでいる。7月の本格施行前に「絶対にやってはいけないこと」を知っておきたい。
1980年以来、実に40年ぶりとなる大規模な「相続のルールの見直し」が進んでいる。この7月までに、多くの新ルールが施行されるので、いよいよ“待ったなし”だ。
今回の法改正のポイントは、「妻が有利になる」ということだ。たとえば、夫の死後も妻が自宅に住み続けられるようになったり、夫の両親(義父母)の介護をした妻に遺産分割の権利が発生したりするようになる。今までは、財産の権利を握る夫が亡くなった時に、余命の長い妻が困ってしまうケースが多かったが、そんな「立場の弱い妻を守る」ことを目的にして、相続の方法が見直された。つまり、「新ルールを知り尽くせば、妻が得をする」ということなのだ。
世間では、遺産分割で家族が揉めるケースが増えているという。そんな“争続”の4分の3が、5000万円以下の相続財産を巡るものだ。「金持ち喧嘩せず」とはよく言ったもので、本当のお金持ちは相続争いなんてしないもの。「ウチは資産が多くないから、関係ない」なんて言っている家庭こそ、揉めるのだ。
妻が「新ルール」を上手に使って、損しない相続、揉めない遺産分割をするためにはどうすればいいか──。
「65才以下」は「配偶者居住権」を選択すると損をする
今回の改正の目玉ともいえるのが、「配偶者居住権」の新設だ。税理士でトラスティーズ・コンサルティングLLPの吉永誠さんが説明する。
「夫(被相続人)の死後、妻や子供(相続人)が遺産を分け合う場合、これまでは自宅を売らなければ遺産分割できないケースが少なくなかった。しかしこれだと、妻は現金を手にできても、住み慣れた家を失うことになります。そこで新設されたのが『配偶者居住権』です。この権利を主張すれば、妻は死ぬまで自宅に住み続けることができるようになります」