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深刻化する「タクシー離れ」とその課題 運転手の質の低下を嘆く声も

 同様にタクシー運転手の質の低下を嘆くのは、商社に勤務する40代男性・Bさん。せめて目的地にしっかりと到着できる質を求めたいと話す。

「昔は“道のプロ”という感じで、渋滞が発生しにくい場所や近道なんかを知っていて、何度も助けられた。でも、いまは配車しても、道を間違えて遅くなる、道がわからないからタクシーに乗ったのに、逆に道を聞かれて、僕がスマホの地図アプリを起動する、なんてこともしばしば。目的地に快適かつ安全に到着できることを、タクシーに求めてはダメなのでしょうか」

 運転手側に課題が残る一方で、利用する側もタクシー離れせざるを得ない背景がある。昨今の働き方改革の影響で、残業時間の削減が叫ばれており、また、会社の飲み会事情も変化している。

「ここ3年で、終電を逃すような残業がなくなりました。当然、タクシー帰りは激減。飲み会をしても若い世代は1次会で帰るので、それを見習う形で私も帰るようになって、タクシーを使う頻度がますます減りました。私より上の世代は相変わらず、何軒もはしごしてタクシーで帰っているみたいですが……」(Bさん)

 タクシーの決済も課題の一つだ。IT企業に勤務する30代女性・Cさんは、スマホ決済やクレジットカードで決済することが習慣化。ゆえに、決済方式のバリエーションの少なさに辟易としていると話す。

「東京ではクレジットカードはもちろん電子マネーに対応し出している。それでも、クレカで払うと嫌な顔をされることもある。iDやSuica対応は多くなってきたけど、私がよく遣うQUICPayに対応してないタクシーが多いのが個人的に不満です。やっぱり乗るのを躊躇してしまう。それ以上に地方に行くと、大阪や京都のような大都市でも、クレカさえも使えずに現金だけというタクシーも少なくない。タクシーのために、財布を出したり小銭を用意したりするのは面倒くさいのでどうにかしてほしい」

 それぞれのタクシー離れの事情があるようだが、それでは今もよく利用しているのはどんな客なのか。60代のベテラン男性運転手は、最近の利用者の傾向をこう語る。

「昼間はご高齢の方の病院への送迎が多いです。夜は以前、残業や飲み会で終電に乗り遅れたお客さんが結構いたんですが、働き方改革の影響か、そういう人が減りました。逆に増えたといえば、最近は30~40代くらいの女性が、疲れた顔で乗ってくることが多くなりました。まだ電車がある時間帯でも、『今日はご褒美なので』と、3~5駅ほど乗られることもよくあります」

 2019年度中にも「相乗り型タクシー」が全国で規制解禁される見通しだという。新しい試みの導入が起爆剤として期待される一方で、キャッシュレス化など多くの課題を抱えるのも事実。今後、タクシー業界の生き残りをかけた戦いがますます激しくなりそうだ。

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