老後の生活を楽にしようと投資を始める人が増えている。投資初心者の場合、株はリスクが大きいと、投資信託を勧められることが多い。とくに毎月定額の配当がもらえる「毎月分配型投信」は、年金の足しになると高齢者に人気の投資商品だ。ところが、それで資産を減らしてしまうケースが絶えない。
「銀行の窓口で“投資で老後資産を増やしては”と投資信託を勧められ、よく考えもせずに購入したのが大失敗。気がつくと元本割れしていて、老後資産が増えるどころか目減りしてしまった。こんなことならそのまま預金口座に置いておけばよかった」(68歳男性)
QUICK資産運用研究所は2018年7月の調査で、この毎月分配型投信の9割が“元本取り崩し”状態にあると報告している。経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「これは毎月の分配金が運用益ではなく、元本を取り崩して払われているということです。その状態が続けば最終的に元本割れになる危険が高い。しかし、購入者は毎月配当がちゃんと振り込まれているから大丈夫だろうと思い込んでいるケースがほとんどなのです」
老後の不安から始めた投信で、かえって資産を減らす結果になりかねないのだ。
「自分で調べ、自分で考え、自分でちゃんとリスクを取っているんだ、という意識があるなら話は別です。しかし、素人が投資に手を出すのは非常に危険。とくに老後は現役時代のように稼ぐことができないのですから、リスクを取るのは避けるべきです」(同前)
若いうちなら、投資で損をしても「いい勉強になった」と、後で取り返すことができる。だが、70歳になったら挽回する方法が極めて限られることは肝に銘じたい。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号