老後を自宅で過ごすか、老人ホームなどの施設に入るかは、“終の棲家”を決める人生最後の選択である。
自宅に死ぬまで住み続ける場合、要介護状態になればバリアフリーに改修する必要があり、自宅の規模や工事箇所によっては、莫大なリフォーム費用が心配だ。
その点、老人ホームなら入居時の一時金やその後の月額費用もパンフレットなどで明示されているため、将来的な見通しが立ちやすいと考える人は多い。老人ホーム検索サイト「みんなの介護」によれば、民間の介護付き老人ホームの一時金の平均額は356万4000円、利用月額は平均22万4000円だ。
だが3年前、70歳過ぎて妻が亡くなったのを機に自宅を売却して介護付き老人ホームに入居した男性(73)はこうボヤく。
「初めに施設側から説明された額なら、退職金と毎月の年金で賄えると思って入居しましたが、大間違いでした。病院に通うことになれば送迎費用を施設に払わなければならないし、おむつなどの介護用品が必要になれば、それも自分で払わなければいけない。入居時の一時金と月額費用以外に支払うお金が多すぎて、“このまま死ぬまでここにいられるのか”と不安になってきます」
一方、自宅に住み続けた場合はどうか。介護アドバイザーの横井孝治氏がいう。
「『要支援・要介護』認定されていれば、廊下の手すりの設置などには介護保険が適用されて自己負担は1割で済む。トイレや浴室などそれ以外のリフォームを全部含めても100万円程度で可能でしょう」
高齢者施設に入居するとしても、自宅を改修するにしても、一度決めたら後戻りはできない。どちらが金銭的に「穏やかな老後」かよく考えての判断が必要だ。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号