田代尚機のチャイナ・リサーチ

米国のファーウェイ制裁措置に中国政府が反撃しないワケ

 また、華為技術に対する制裁措置は、会社側の説明を聞く限りでは影響は限られるようだ。華為技術社長室は17日、社員向けにEメールを発信している。その中には、「こうした事態について、我々は何年も前から想定しており、研究開発、業務の面などいろいろな角度から大量の資金、人材、時間を投入し、十分な準備を進めてきた。極端な状況下においても、華為技術の経営は大きな影響を受けることはない」と書かれている。

 華為技術の子会社で半導体メーカーである海思半導体でも17日早朝、社員向けにEメールを送付している。それには、「お客様に対して継続してサービスを提供させていただくために、華為技術はスペアタイヤのように、秘密裏に用意してあったICチップを今回の禁輸で使えなくなったタイヤ(アメリカ製ICチップ)と交換する」などと記している。

米国との全面対立となれば対中強硬派の思い通り

 さらに、華為技術の任正非CEOは18日、日経新聞などの取材に応え、「今回の件で、増収率は鈍化するだろうが、その影響は局所的である。2014~2018年における年平均増収率は26%であったが、今期は20%を下回る程度であろう」と発言している。

 業界関係者によれば、華為技術はコアの部品については、半年から1年程度の在庫を確保しているようだ。グーグルとの提携関係が凍結され、アンドロイドの新規更新や、有料アプリの供給ができなくなったりする可能性があるが、中国国内ビジネスに関してはもともとグーグルのアプリケーションは制限がかかっており、全く普及しておらず、影響はなさそうだ。影響が出るとすれば、欧州などの海外市場に限られる。

 また、AFP通信や中国本土メディアによれば、アメリカ商務省は20日、華為技術に対する輸出禁止規制について、90日間延期し、8月中旬以降発動すると発表している。華為技術のネットワーク設備のユーザーやビジネス上のパートナーは、すぐに取引停止を強要されれば業務に大きな支障をきたす。輸出禁止に伴う処理を済ませるために時間が必要である。それ以上に、一方的に取引を停止すれば、訴訟は免れない。90日間については、あらゆる取引が黙認される形となりそうだ。であれば、この間に解決の道を探ることもできる。

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