田代尚機のチャイナ・リサーチ

米国のファーウェイ制裁措置に中国政府が反撃しないワケ

 アメリカは様々な考え方、立場の人々から成り立っている多様な国家である。アメリカの中には、中国とウィンウィンの関係を築いており、今後もそうした関係を維持したいと考えているグループ、いわば親中グループが存在する。自由化、国際化を進めることによって、国家の枠を超えて活動することで、自分たちの利益を最大化しようとしているグループでもある。中国がそうしたグループと対立してしまうのは避けなければならない。

 多くのグローバル企業にとって、中国は重要な市場である。ボーイング社は中国に対して、大量の航空機を販売している。キャタピラーは大量の建設機械を供給している。アップルは中国をバリューチェーンの中心の一つに置いている。生産に関しても、販売に関しても、中国の重要性は非常に高い。テスラ、GMなどの自動車メーカーにとっても、インテルのような半導体メーカーにとっても、中国は最重要市場である。コカ・コーラ、マクドナルド、スターバックス、P&G、ナイキなどといった消費関連も同様だ。それらに投資銀行を中心とした金融機関が加わる。

 中国は、自由な貿易や投資を通じてこそ、自国の平和を確保できると考えている。味方である彼らを敵に回すようなことをすれば、アメリカと全面的に対立してしまうことになり、それこそ対中強硬派の思い通りの展開となってしまう。だから、親中派である投資銀行が困るであろうアメリカ国債の売却はやりたくないし、アメリカのグローバル企業に対する中国市場の締め出しもやりたくないはずだ。

 中国にとって次の大統領選まで耐えることが最善の方法であろう。たとえトランプ大統領が再選したとしても、任期後半の2年はレームダック化する。アメリカの内部にいる親中派を少しでも増やすよう自由化、国際化を進めることが得策だ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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