「生涯未経験」は本人たちが望んだことではない
まず確認したいのは、親と同居する未婚者の増加だ。2015年に厚生労働省が行った調査によれば「50才まで一度も結婚したことがない人」の割合を示す生涯未婚率は男性23.4%、女性14.1%。つまり男性の約4人に1人、女性の約7人に1人が一生結婚しない。
未婚者のうち、親と同居する20~50代は約1430万人で、未婚者全体の約7割を占める。この人数は1980年からの35年でおよそ3倍に急増したという。しかも彼らの中の少なくない人数は性交渉をした経験がない。
先述した性交渉に関する調査によれば、この20年あまりで性交渉未経験の18~39才の割合は、男女とも増加傾向にある。
この傾向は特に30代において顕著で、30~34才の年代で見てみると、女性は1987年の6.2%から11.9%に、男性は8.8%から12.7%に増加したことがわかった。人口換算すると30代の156万人もの男女が一度も性交渉を経験していないということになる。同調査を論文にまとめた医師で疫学者の上田ピーターさんが言う。
「特筆すべきは、30代前半と後半の未経験率があまり変わらないということ。つまり、“未経験のまま30代になると、その後も性交渉を経験する可能性が低い”ということ。生涯にわたって未経験のままである可能性が高いことも推測できます」
これでは日本が少子化に苦しむのも無理はないが、肝心なのは「生涯未経験」は本人たちが望んだのではないことだ。