「厚生労働省の『出生動向基本調査』によれば、性交渉未経験者の8割近くは結婚を望んでいます。つまり、“自分としては恋愛や結婚をしたいのに、何らかの要因でそれができない”という事情があるということです」(上田さん)
その“要因”の1つとして上田さんが挙げるのは、「貧しさ」だ。
「特に男性は、『非正規雇用』または『無職』の人ほど未経験者が多かった。日本社会で格差が拡大するなか、社会的地位が低くて収入が少ないと魅力的な恋愛対象になりにくい。また収入が少ないと実家を出ることができず、自立するきっかけを逃し、結果として結婚が難しくなるとも考えられる。実家暮らしの未婚者が増えていることも『貧しさ』が背景にあると推測できます」(上田さん)
確かに家を出てひとり暮らしを始めるとなれば、家賃はもちろん、敷金礼金などの初期費用、光熱費、食費など、かかるお金が青天井になる。もし東京都内で暮らしたとしたらその額は初期費用で約50万円。その後も、月々15万円前後はかかる計算だ。都内で両親と暮らす53才の女性が語る。
「大学を卒業してからフリーランスで翻訳の仕事をしています。始めたばかりの頃は大卒の会社員よりいいお給料をもらっていたけれど、不況で徐々に単価が下がり、現在の月収はおよそ10万円。実家を出ようと考えたこともありますが、この収入では現実的に不可能です。
昔は家に月10万円入れていたけれど、今は3万円くらい。食費や光熱費は親任せで、正月には、まだお年玉をもらっています。45才の頃からお見合いをしていますが、なかなか相手が見つかりません。親は私の稼ぎが少ないから、たとえ結婚できても肩身の狭い思いをするのではないかと心配しています」
※女性セブン2019年6月6日号