日銀は、2016年2月からマイナス金利政策を実施している。だが、仕組みが複雑なせいか、政策の中身を細かく理解している人は少ないのではないだろうか。導入の発表直後には、政府・与党関係者からも「政策が難しくてよく分からない」という声が上がったほどだ。
そもそも、何のお金がマイナス金利の対象になっているのか。それは、日銀の当座預金に預けられているお金である。
日銀の当座預金とは、日銀が取引先である銀行や証券会社などの金融機関から受け入れている預金のこと。金融機関が日本銀行や他の金融機関と資金を取引する際に使われるほか、金融機関が日銀に預け入れることを義務付けられている「準備預金」も当座預金の口座に預けられている。
日銀のマイナス預金の対象となっているのはこの当座預金の一部で、4月以降は、金額としては10兆~30兆円程度を、マイナス金利(-0.1%)の対象にすると日銀は公表している。
こうしたマイナス金利の影響で、4月末時点、国債は翌日物(満期が1日)から10年物までの金利がすべてマイナス圏内となっている。4月28日の翌日物金利は-0.06%前後、10年国債の利回りは-0.085%(終値)となっている。
それではなぜ、日銀当座預金の金利がマイナスになると、国債の利回りがマイナスとなるのか?
金融機関にとっては、マイナス金利の対象となる当座預金が100億円あると、そのうちの0.1%である1000万円を日銀に支払わなければならない。それなら、-0.1%までであれば他の金融商品を購入した方が得をする、という計算が働くことになる。だから、金融機関は利回りがマイナスとなっている国債でも買うのだ。
文/松岡賢治(ファイナンシャルプランナー・ライター)