政府は、6月11日発表の「経済財政の基本方針(骨太の方針)」で、働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」(在老)の“廃止”を打ち出した。現在、60~64歳までは月給と年金の合計収入が28万円、65歳以上は47万円を超えると働き続ける限り年金がカット(支給停止)される。これが早ければ2021年に廃止となると見られている。
在職老齢年金制度の廃止を喜んでばかりはいられない。働く人の「年金カット廃止」は、政権が用意した国民への“アメ”だ。参議院選挙が終われば、政権は「年金財政の健全化」を大義に、国民に大きな“ムチ”を振るう。
厚労省が6月に公表するとみられていた「財政検証」の結果公表を先送りにしたのは、そこから改悪の全貌が見えてしまうことを危惧したからだろう。いち早く全容を知り、対策を講じなくてはならない――。
安倍晋三・首相の口から久しぶりにこのフレーズが飛び出した。
「マクロ経済スライドも発動されましたから、いわば『100年安心』ということは確保された」
金融庁報告書の「年金不足」問題で紛糾した参院決算委員会(6月10日)の質疑で、そう答弁してみせたのだ。
この期に及んでもまだ「安心」と言い張るのか――そう抗議したくなるのは当然だが、実は安倍首相は嘘を言っているわけではない。