厚労省は5年ごとに年金の「財政検証」を行なう。100年先までの保険料収入と給付の見通しを試算、制度を点検し、新たな改革を追加することを目的とする。今年の財政検証では、厚生年金の加入期間延長も年金改革の重要テーマとなる。
現在は会社員でも70歳を超えると厚生年金から外れ、保険料は払わなくていい。ただし、働きながら年金を受け取っている人は特定の金額をカットされる「在職老齢年金」と同じく、月給と年金の合計が47万円を超えると年金が減額される。
今回の改革ではそれを改め、いくら給料をもらっても年金を減額しない代わりに、70歳以上の会社員にも保険料を払わせるようにする。
年金加入期間が延びれば、受け取る年金額は増える。「70歳からも年金アップできますよ」という建前だ。だが、そこには注意が必要だ。社会保険労務士の蒲島竜也氏が指摘する。
「年金が増えると言っても、新たに支払う年金保険料を年金の増額分で取り戻すためには単純計算で18年かかる。70歳から75歳まで厚生年金を支払っても、その分の年金増額は75歳からの年金に反映されるため、93歳まで長生きして年金を受給しなければ保険料の“取られ損”になりかねない」
※週刊ポスト2019年6月28日号