3つの特徴でもっとも重要と思われるのは【3】である。リブラ協会は金融生態システムの発展を促進することを目的としており、各地域の企業、非営利組織、多様な組織・学術機関などで構成され、それぞれが協会が定める規則に責任を持つことになる。つまり、リブラの発行、ガバナンスを行うのは、フェイスブックではなく、リブラ協会となる。設立時には、マスターカード、ペイパル、ビザ、ブッキングホールディングス、eベイ、フェイスブック/カリブラ、リフト、ユーバー、ボーダフォングループなど28社が参加する予定。顧客獲得や用途開発に強力な支援者となるだろう大手企業が多様な産業から多数参加している。
フェイスブックの会員数(Monthly Active Users)は2019年3月末時点で23億8000万人。それにリブラ協会構成企業のユーザーが加わるとすれば、リブラは一瞬にして、世界規模でいろいろな取引の決済通貨として、広く使われる可能性もある。同時に、それが実現すれば、国境を跨いだ資金移動が極めて小さなコストで瞬時にできるようになる。単に銀行が、主要業務を奪われるというレベルではなく、ドル、ユーロといった国際通貨の強力なライバルとなり得るのだ。
ただし、何の規制もなくリブラの開発が進み、利用されるようになれば、経済制裁の迂回に利用されたり、マネーロンダリングの手段として悪用されたりすることになる。さらに、リブラが普及すれば、国家を単位とする金融政策、通貨政策に重大な影響が生じ、ひいては経済政策が成り立たなくなることもあり得る。それだけに、各国政府は強い警戒感を露わにしているだろう。
フェイスブックは昨年、大量のユーザー情報がハッカーの攻撃によって盗み出されるといった事件を起こしている。アメリカの下院議員の中には、セキュリティやプライバシーに関する問題をきちんと処理するまでは開発停止を求めるといった厳しい声もある。
ただ、今回の件は国境を超えて自由に活動したいリベラルなハイテク企業と、あくまで国家としての枠組みを守ることで既得権益を維持したい保守的なグループとの対立といった見方もできよう。リブラの創設は、ドルに対する不安を増長しかねない事件であり、長期的に見ればビットコインをはじめ、その他の暗号通貨への需要を高めることに繋がる可能性もありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。