また、これはあくまで平均額であり、それぞれの年金額や持ち家か賃貸かなど生活状況によっても異なります。
平均額を知って不安になるだけでは何も解決しません。大切なのは、自分の生活にどれくらいのお金がかかるのか、収入がどれくらい見込まれるのかをシミュレートし、不足するならそれをどう賄うのかを考えることです。
自分の年金額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認することができます。そこでは現在の水準でもらえる金額が表示されていますが、今後、受給額は下がることが想定されますので、収入は8割程度になると考えておいたほうがよいでしょう。
一方の支出です。住居費を除いた生活費は退職後には現役時代の8割ほどになるといわれていますので「現在の住居費以外の生活費×8割+住居費」を計算してみましょう。例えば賃貸の家賃が8万円でそれ以外の生活費が10万円なら、老後の生活費は16万円になる計算です。
それら収支の差額で、1か月にいくら預貯金を取り崩す必要があるかがわかります。自分の寿命は誰にもわかりませんが、仮に退職後30年の“第二の人生”があると考えるなら、360か月をかけてみましょう。そこから退職金を引けば、退職までに必要な貯蓄額がわかります。
今回の報告書は、「2000万円」ばかりがクローズアップされましたが、私たちが老後の暮らしを守るために必要な心構えやマネープランが世代別に挙げられています。ぜひ一度、報告書の内容をご自身で確認してみてはいかがでしょうか。個人的には、この報告書自体に対して「2000万円なんて貯められるわけがない!」と怒りを覚える理由はまったくないと思っています。
◆しみず・あや/CFPR、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、証券外務員I種。30歳でファイナンシャル・プランナーとして独立、長野・東京で活動中。主に30~40代の「普通のくらし」を求めている方への「自分がお客様の立場だったらどういう判断をするか」を軸にお金の持ち方・つかい方のアドバイスに力を入れている。ライフプラン作りから資産運用まで老後にわたる継続的なサポートすることを事業理念として活動している。HPはhttp://www.fp-saku.com/。