2019年は緩やかな下落トレンドを続けてきたユーロ/ドルだが、6月に入るとトレンドの転換期を迎えたのか、乱高下している。元インターバンクディーラーで外国為替ストラテジストの水上紀行さんが最近のユーロ/ドルの値動きについて解説する。
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ユーロ/ドルが買い気の強さを見せています。
2019年のユーロ/ドルは欧州のファンダメンタルズの弱さを背景に、1月から6月にかけてジリジリと約450ポイント下がりました。戻りの高値付近では、投資家の売りが執拗に出ていたもようです。
6月は欧米勢の中間決算の時期を迎えます。決算の時期には、ポジションを決済する動きが散見され、今年もそれまでユーロを売ってきた投資家は、ショートポジションを買い戻すことで決算したと思われます。ユーロ/ドルは5月末の1.11台でしたが、6月12日になると1.1348程度まで、200ポイントほど反発。6月12日に1.1200を下割れし、決算のポジション整理は一服したと思いました。
ところが、6月19日以降ユーロ/ドルは上昇を再開し、6月24日には1.1404をつけ、ここ3か月の高値を更新。中間決算絡みの買い戻しがまだ終わっておらず、再度買いが強まった可能性があるのでは、とも考えましたが、買いが再燃した6月19日は米FOMCの会見があり、FRBの年内利下げ観測が強まった日です。
欧米が再び金融緩和の方向に舵を切ることになりそうで、投資家に何らかの心境の変化があったのでしょう。テクニカル指標に目を向けると、2018年5月に実勢値を下に割り込んだ200日移動平均線が、1年越しで上抜いてきていることが印象的です。200日移動平均線を上抜く・下抜くは、長期のトレンド転換と見て良いように思います。
ユーロの上昇は今までのダメダメなユーロ経済からは、考えられないことでした。現状のユーロ/ドルは、もの凄い買い気となっています。それに似た展開となっているのが、金の上昇です。これには、ユーロと金の相関関係によるところもあるのでしょう。
ユーロ/ドルの買いの勢いは相当強いので、逆らわない方が賢明です。
【PROFILE】水上紀行(みずかみ・のりゆき):バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。主著に『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』(すばる舎)、『FX常勝の公式20』(スタンダーズ)他多数。メールマガジン「水上紀行のFXマーケットフォーカスト」配信中。ツイッター@mizukamistaff