しかし、お父さんに対して保険料の立替金の返還請求権を持っていたことになり、相続財産から清算を求めることはできます。ただ、それは受取人の固有の権利である保険金とは関係がなく、相続財産に属する債務としての清算です。
なお、遺贈や結婚資金などの生前贈与を貰った人がいた場合、公平を期すために特別受益として実際の遺産に計算上加算し、遺産分割して特別受益分を控除してから、実際に分割する制度がありますが、保険金は該当しません。
ただし、保険料を被相続人が支払った結果、共同相続人の一部だけ他の遺産に比べ極めて大きい保険金を得て、不公平が著しい場合においては、特別受益の規定が類推適用される可能性もあります。
【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年7月12日号