父の生命保険料を私が肩代わりしたのだから、きょうだいの誰よりも多く相続したい──気持ちは理解できるが、そんな考えは通るのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
先日、父が亡くなりました。生前、父から毎月の生命保険料の支払いが難しいと相談され、仕方なく5年間も2万円を口座に振り込み、払い続けていました。だから当然、支払われる保険金は、ほかの2人の兄弟よりも多く貰ってもよいのではないか、と思っています。この判断は法的に間違っていませんよね。
【回答】
生命保険金は、生命保険契約上の受取人が保険契約に基づいて取得する権利であって、相続財産ではありません。保険契約で受取人が指定されていれば、被保険者の死亡により、発生する保険金請求権は、その人の固有の財産です。
相続人が複数いて遺産分割協議が必要な場合では、生命保険金は当該受取人の財産になり、遺産分割の対象ではありません。受取人が相続人と指定されていたり、あるいは契約者自身が受取人になっていた場合には、法定相続人が法定相続分に応じ、固有の権利として保険金を請求できます。
生前の保険料を5年間分立て替えていたとしても、保険金の帰属は上のとおり、保険契約の定めによって決まるので特別優遇されません。共同相続人の一人が被相続人の事業で働いたり、財産上の給付、被相続人の療養看護などで被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合には、その分を遺産から先取りできますが、保険料の立て替え程度では、特別の寄与は認められないでしょう。