まず、毎月の掛け金は所得税や住民税が控除される。1年分の所得税、住民税がそれぞれ2万7600円軽減され、10年間の総額は55万2000円だ。
さらに積み立て総額276万円を2%で運用できれば、その利益は28万9726円になる。かかるはずの税金(所得税等20.315%)5万8857円が、iDeCoならゼロ。加えて積立金と運用益の合計304万9726円を一時金で受け取った場合、退職所得控除が適用され、丸々300万円が手に入るのである(年金方式は、公的年金の額によって税負担が異なる)。
毎月の積立額をもう少し増やせるなら、妻もiDeCoを活用する手がある。妻が専業主婦ならば、上限はサラリーマンの夫と同じ2万3000円。所得がない分掛け金の控除は見込めないが、運用益などへの税金はゼロで済むので500万~600万円の老後資金捻出も現実的な数字となる。
「60歳まで」と「60歳から」で違う
注意すべき点もある。
「iDeCoでは、個別株への投資はできず、投資信託が主な運用先となりますが、金融機関によって投資商品の品揃えは違います。商品によって月100円台から500円程度まで手数料負担にも幅がある。月額数百円の違いでも10年運用すると大きな差になります。また、自分で運用するため、マイナスになって元本を割り込むリスクもある」(同前)
ではどのような商品で運用したらいいのか。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が着目するポイントは、「世界株」と「インデックス(指数)投資」だ。
「投資信託は国内外の債券や株式を組み合わせますが、日本株よりも世界株のほうが比較的高いリターンを期待できる。同時に経済指標に連動した投資信託を選ぶことでリスクを分散することができます。世界株インデックスのファンドは多くの金融機関にあるので、有力な選択肢となる」