そこで私が一番勧めたいのは、老後は都会と田舎の中間、私がいうところの“トカイナカ”で暮らすことだ。東京中心にいえば、都心から50~100km圏の圏央道周辺の都市。具体的には、海老名、八王子、入間、久喜、つくば、茂原といった地域である。
トカイナカは、家賃が都心に比べて3分の1くらい安い。家を買うにしても、今は高齢者が郊外の自宅を売って都心のマンションに移り住むのがトレンドになっているため、驚くほど激安状態となっている。
物価も都心に比べて3割は安い。庭が広めの家を買えば、庭で野菜が作れる。40平米ぐらいの庭があれば、夫婦で食べる分の野菜くらいは十分に自給が可能だ。トカイナカは人間関係も適度な距離感で、都会に出るにも時間はさほどかからない。
そうした大都市圏の郊外だけでなく、地方の県庁所在地など中核都市に住む選択もいいだろう。たとえば、群馬県の県庁所在地である前橋市には、坪単価10万円程度と破格の値段で土地が買えるところもある。しかも、物価も安い。そうした暮らしを選択すれば、それほど生活費は必要なくなる。
60歳を過ぎても都心居住にこだわり、今までの暮らしを守るためにやりたくもない仕事を我慢して続けるよりも、発想を変えて家計のリストラを実践すれば、たとえ老後資金がゼロでも楽しく暮らすことは可能なのだ。
年金が大きくカットされるのが確実ななか、そうした暮らしの構造転換ができるかどうかが、老後の幸せを大きく左右することになるのだろう。