ここまで極端なケースではないにせよ、50代で「貯金ゼロ」となると、老後に向けて重くのしかかるのが住宅ローンだ。金融広報中央委員会調べによると、年収1200万円以上の家庭で貯金ゼロの割合は2005年は7.6%、2010年は4.9%となり、2015年は11.8%に増えている。よって、年収が高くても貯金ができない家庭が存在するのだ。
「35歳くらいから35年ローンを組んでいるケースはよくありますが、定年退職後の5年間で数百万円以上を支払うのに、貯蓄なしではまず無理」(同前)
そうした悲劇から学ぶべきは、計画的に支出を減らしていく「生活のダウンサイジング」の重要性だ。家計再生コンサルタント・横山光昭氏は、「分岐点は収入が上がらなくなり、定年が視野に入ってくる55歳頃」と指摘する。
「そのくらいのタイミングで支出を見直せないと、いつまで経ってもお金が潤沢に使えた頃が忘れられず、現役時代の収入が多くても老後が逼迫する『隠れ破産』のリスクがあります。逆に言えば、うまく見直すことで、収入が少なくても余裕のある生活が送れる『こっそリッチ』を実現できます」
※週刊ポスト2016年5月27日号