利下げ観測が強まり、ドル安の可能性が叫ばれるものの、1ドル=107円が底堅い。ドル/円のレンジ相場はいつ終わるのだろうか。元インターバンクディーラーで外国為替ストラテジストの水上紀行さんが今後の見通しを解説する。
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6月3日以降のドル/円は、1ドル=107~109円近辺を推移するレンジ相場です。そのレンジ相場の中で機関投資家は「ドル/円が下がったら買い、上がったら売り」というトレードをしていると思われ、その影響で戻り高値が切り下がっています。
直近では、7月22日にもその傾向を見て取れました。22日にドル/円は1ドル=108円を上抜きましたが、すぐに1ドル=107円台後半に押し戻されています。おそらく機関投資家が1ドル=108円で保有していた買いポジションを決済していたためでしょう。彼らが新規に買いを保有したのは、19日のニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の早期利下げを強く示唆し(後に否定)、1ドル=107.21円まで下押したあたりと思われます。
こうしたドル/円の上値の重さは週足で見るとより顕著で、このまま反発の余地が限定され続けると、ドル/円は下落の可能性が高まります。
ドル/円がレンジ下限の1ドル=107円をブレイクするかどうかは、30~31日に開催するFOMCの結果次第ですが、1ドル=107円をしっかり割り込むと、年初のフラッシュクラッシュの安値1ドル=104.30円近辺を目指すと思います。
例年8月に入ると、国内投資家による「米国債の利金(利息)の円転」が散見され、円買い需要が高まります。米国債のドル建て元本・利金の受取日は8月15日ですが、それよりも前の8月1日から生保のような大手投資家が為替予約を行うケースもあり、円買い需要は20日近辺まで続きます。2018年8月もこの円買い需要により、2円以上の円高となりました。
1ドル=107円を下にブレイクするタイミングは、7月末のFOMCを経て、8月の円買い需要が高まるころと予想します。さらに、8月は例年リスク回避が起きやすいため(地政学的リスクが高まるなど)、円高への注意はしておきましょう。
【PROFILE】水上紀行(みずかみ・のりゆき):バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。ロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍、現在は外国為替ストラテジストとして活動。主著に『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』(すばる舎)、『FX常勝の公式20』(スタンダーズ)他。メールマガジン「水上紀行のFXマーケットフォーカスト」配信中。ツイッター@mizukamistaff