横のつながりがない中途入社組の苦労
別の30代男性会社員・Bさんは、新卒時はリーマン・ショックの煽りを受けて就活も苦戦。いったん中小企業に入社するも、20代後半で東証一部上場の大手企業の転職に成功。磨いてきた高いスキルと高偏差値の私大卒という学歴もあってリベンジ転職となったが、中途入社した当初は居心地が悪かったと明かす。
「中途採用がほとんどない部署だったこともあり、自力で成果を出して、会社のカルチャーを理解する必要があり、苦労しました。特に多くの職種の人たちと連携が必要な職種だったため、ゼロから社内人脈を構築していくのは本当にきつかったです。社内の承認を得るのに暗黙のルールやしがらみも存在するのも厄介でした。同年齢の生え抜きの同僚を見ていると、本当に羨ましかったですね。やはりずっと同じ会社にいるというだけで、違う部署にいても共通の話題ができる。各部署で可愛がられている印象でした」(Bさん)
出世にも生え抜きか中途入社かは大きく関わってくるという。Bさんは「ハズレを引いた」と苦笑いを浮かべる。
「大手企業は生え抜きじゃないと出世しにくいという噂は聞いていましたが、いざ自分がその立場になったときに、思い知らされました。うちの会社の場合、部長以上のほとんどが生え抜きで、これは先がないな、と。
確かに会社への忠誠度が高い生え抜き社員の方が、社内評価も高くて出世しやすいのは納得できる部分もあります。終身雇用を続けてきた伝統的な大企業の団結力や強さみたいなものを見た気がしました」(Bさん)
新卒入社で大手企業に10年以上勤め、その後ベンチャー企業に転職した経歴を持つ40代女性会社員・Cさんは、「色々な会社があるから、一概には言えませんが…」とことわったうえで、中途入社組が苦労する理由をこう分析する。
「生え抜きだと、いろんな部署に知り合いがいたり、だんだん同期が偉くなっていったりして、ちょっとした相談があったり、情報がほしいときに気軽に話ができる。中途入社組は横のつながりがなく、社内の人間関係を意識して広げないといけないので、その過程で社内の風土に合わず、辞めていく人を何人も見てきました」(Cさん)
また、Cさんは、働く側として、新卒と中途での企業選びの違いに注目する。
「最近は新卒でも条件面を重視するといいますが、昔は条件はそこそこで、どちらかというと“自分のやりたいこと”を重視したり、リクルーターの人柄や会社の社風に惹かれて入社する人も多かった印象があります。
一方で、中途入社の人は給与や福利厚生などといった条件やスキルマッチで企業を選びがちだし、選ばれている。条件がいいところがみつかれば、すぐにまた転職してしまいそうな危うさがあります。そういった意識の差を、生え抜き社員も感じるのでしょう。なかなか溝が埋まらない所以です。ただ、これはあくまでも相当の大企業の話。中途社員も多い中小企業では、どんな経歴であれ、フラットに付き合っている印象があります」(Cさん)
売り手市場の昨今、“新卒カード”の切り方に、より慎重さが求められそうだ。