今年前半の日本株の高騰は、やはり日銀の異次元金融緩和の効果が大きいだろう。とはいえ、今後さらに日本株が上昇するかどうかはわからない。アベノミクスの「成長戦略」が日本株を押し上げる要素となるのかどうか、かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として、巨額の報酬を得た後に退社した、赤城盾氏が解説する。
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今のところ、黒田日銀の“異次元緩和政策”は、円安の維持を通じて企業業績を好転させ、ヘッジファンドが誘導した株高の水準を正当化することに成功している。しかし、今後のさらなる円安の進行は、アメリカが金融緩和の縮小に向かわない限り、容易ではあるまい。
厳しい財政状況を鑑みれば、財政出動の余地にはおのずから限界があろう。消費税を上げてバラマキというわけにはいくまい。規制緩和の効果を声高に唱える向きもあるが、多くは恩恵を期待する特定の業界、企業の代弁者ではなかろうか。
150年前の明治政府は、当時の主要産業であった農業分野で田畑勝手作や田畑永代売買の禁令を解いて、大いに景気浮揚を図れたのであろうが、現在の日本経済にそれほどのインパクトを持つ規制が残されているとは思えない。削るべき政府部門のムダも、いわれていたほどになかったことは民主党政権が立証した。
結局のところ、日本経済全体にとって実効性を見込み得る成長戦略は、法人減税、社会保障の縮小、雇用の流動化など、国民大衆の利益を犠牲にして企業部門を優遇する、政治的に困難な施策に限られるであろう。
奇しくも日本で参院選が実施された直前に、米デトロイト市の財政破綻が報じられた。ここに本社を置くゼネラルモーターズ社は、公的資金を投入された後に見事に復活したが、税制上の優遇を得ていて市に法人税を払っていないという。しかも、新たな投資は現地生産を進める新興国に向かうため、市では雇用も増えない。
製造業の衰退、税収不足、治安の悪化、住民の流出の末の財政破綻。とても、他人ごととは思えない。デトロイト市は未来の日本の縮図かもしれない。
※マネーポスト2013年秋号