人民元の下落が続いている。中国国内で中国人がドルを買う場合、銀行を通して買うことになるが、各銀行はそのドルを銀行間取引市場で仕入れ、幾らかの手数料を上乗せして顧客に提供する。
銀行間取引市場では、中国本土金融機関を中心に、一部の海外金融機関も参加する中で、自由に取引され、値が付く。この部分だけをみると、変動相場制と何ら変わらないが、中国ではある特殊な制度が付け加えられている。
それは、中国人民銀行が取引開始時間直前までに基準値を発表し、市場関係者はその±2%以内で取引をしなければならないという制度である。制限いっぱいに達した場合は、中国人民銀行が無限大に介入し、その価格を維持することになる。しかし、そういうケースはごくまれで、これまで数回程度、ほんの短い時間でしか起こっていない。
中国人民銀行は、この基準値について、“前日の終値+通貨バスケットによるレート+逆周期因子(大きな変動があった場合、その変動と逆の方向に働く因子)”によって決まるシステムを遵守するとしているが、それ以上の細かい設定は示しておらず、また、逆周期因子については中身がよくわからない。それに、問題があると中国人民銀行が判断した場合、彼らは必ず柔軟に対応する。それはこれまでの歴史が示している。
言うまでもないが、中央銀行である中国人民銀行の資金量は市場参加者と比べ圧倒的な額であり、それに逆らって投機を仕掛けようとする機関など存在しない。つまり、この基準値の上げ下げは相場の方向性を決める重要な指標であるということだ。
その重要な指標である基準値が8月1日以降、13日に至るまで、9日連続で人民元安方向に設定されている。8月1日と言えば、トランプ大統領が3000億ドルの中国からの輸入品に10%の追加関税をかけるとツイートした日である。