田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国共産党 構造改革優先で景気減速を容認

共産党の機関紙である人民日報は5月9日、“権威筋による中国経済に関する発言”を掲載した。発言は5つの質問に答える内容となっている。その質問は以下の通りである。

(1)経済情勢をどう見るのか
(2)マクロコントロールはどのように行なうのか
(3)供給側改革はどのように推し進めるのか
(4)“期待”の管理をどのように行なうのか
(5)経済リスクをどのように防ぐのか

(1)について、「総合的に判断すれば、景気のV字回復はおろか、U字回復も不可能である。L字回復となるだろう。このL字も一過性ではない。1~2年で脱することのできる状況ではない」などと説明している。

(2)について、「現在から今後しばらくの間は供給側に主な矛盾が存在し、供給側の構造性改革を強化しなければならない。需要側については投資拡大を適切な度合いに保ち、過熱させてはならない。高いレバレッジは大きなリスクを伴う。上手くコントロールしなければ、金融危機を招いてしまう」などとしている。

さらに、「株式市場、為替市場、不動産市場に関する取るべき政策は、はっきりしている。自分たちの機能、位置付けに立ち返り、自律的な発展規律を尊重し、簡単に成長手段を用いるわけにはいかない」などと説明している。つまり、現在行なわれている株式市場の下支えに対して、否定的な見解を示している。

(3)について、「供給側構造性改革は今後しばらくの間、中国経済運営の“主線”であり、長期的に見れば“中進国の罠”を乗り越えるための“生命線”ともいえる」と説明している。つまり、政策の中で供給側改革が最重視されるということだ。

ところで、権威筋とは誰だろうか?

習近平国家主席は16日、中央財経領導小組第13次会議を召集、「供給側構造性改革を推し進めることは、世界経済情勢や中国経済が新常態の中で発展を遂げるために重大な政策であると判断している。各地区、各部門は思想、行動を統一させ党中央の決定に従い、“三去一降一補(過剰設備、過剰在庫、高レバレッジを取り去り、コストを引き下げ、弱点を補う)”を推し進めることを重点とし、過去の負の遺産が重いから待ってくれとか、困難が多いから行なわないとか、リスクが大きいから避けるとか、伴う痛みがあるから進めないとかいった理由は認められず、必ず勝ち取るといった信念を持ち、どんなことがあってもこの業務を断固として進めなければならない」などと述べている。

これは、前述の権威筋の発言を一部補足するような内容である。権威筋が習近平国家主席に極めて近い筋であるとすれば、これら全ての内容が非常に重要なものとなる。

今年の中国経済は、表面的な成長率は市場が予想する以上に厳しいものとなるかもしれない。もちろん、長期的に見れば、構造改革を進めることは正しいことであろう。しかし、足元の景気を気にしがちな金融市場においては少々残念なことである。

文■TS・チャイナ・リサーチ 田代尚機

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。