アベノミクスは為替市場にどんな影響を与えているのか、来年1月に任期が切れるバーナンキ議長が本当にやりたいこととは? 米国を代表するFXアナリスト、グレッグ・ミカロウスキー氏が年末のドル円相場をズバリ予測する。
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8月12日。日本の4-6月期GDPは3四半期連続のプラスを記録したが、市場予想を大幅に下回る伸びに留まった。これを受け、「2014年4月からの消費税増税は困難」→「『アベノミクス』への信認が低下」→「海外投資家による『円売り・日本株買い』意欲が縮小しかねない」との見方がにわかに広がる中、「ドル円が再び95円を下抜ける可能性がある」との声すら聞かれた。
しかし、加速しかけた円買いの動きに「待った!」をかけたのは、他ならぬ安倍首相であった。首相の自発的な判断によるものなのか、それとも市場の雰囲気に敏感なブレーンに促されたからなのかは定かでないが、首相が『消費税増税』への強い意欲を示したことにより、アベノミクス相場継続への期待感が再燃。売り仕掛けをしていた投機筋の買い戻しと海外勢の買いが相まって、日本の株式相場と円相場が下抜けを一旦回避できたことは事実だ。
いくら商いが閑散な時期であったとはいえ、売りが売りを呼ぶ展開が加速し、6月14日の93.79円(or6月中旬の水準)を下抜けていたら、ドル円は日銀による量的・質的緩和が発表された4月4日の水準に接近していただろう。それはつまり、『3本の矢』の中で安倍政権への評価を最もかさ上げしていた矢の致命的な損傷を意味する。
手厳しい評論家から「ただのハッタリ」と評価されている財政政策(2本目の矢)や成長戦略(3本目の矢)とは異なり、安倍政権にとっての命綱は『デフレ&円高スパイラルからの脱却』、換言すれば日銀による金融政策が生み出す心理面への好影響だ。
一種のプロパガンダのように感じられてならないが、少なくとも日本においては「デフレと円高が終焉を迎えれば、景気は良くなる」と宣伝されている。そのため、日銀による大胆な緩和政策がデフレ&円高スパイラルに歯止めをかけたことは安倍政権から絶賛されているし、国内外の投資家も評価している。
それだけに、株や為替が4月4日の水準に回帰していたら、取り返しのつかないことが起きていただろう。アベノミクスという名のゲームが振り出しに戻ったとみなされ、市場参加者から「アベノリスク」と揶揄されるだけでなく、日本では企業と国民を落胆させる展開となりかねなかった。
そのような悲観シナリオの種火を安倍首相が自ら消し去ったことの意義は大きい。加えて、消費税増税が決定される期待値も高まったわけだが、実際に増税が決定された直後には、新たに何らかの懸念材料が燻る可能性が高まるだろう。
とはいえ、もしそのような懸念材料が顕在化した場合には、日銀による追加緩和が正当化される環境が整うこととなる。つまり、年末にかけて日本サイドが外国為替市場に及ぼす影響は、円安基調を継続させるものと見込んでいる。
※マネーポスト2013年秋号