8月27日に公表された年金の「財政検証」では、経済成長率や物価上昇率が高い順に、将来、どれぐらいの年金がもらえるのか「6つのケース」が試算されたが、最も経済成長率の高いケース(経済成長率0.9%)でも、公的年金は約2割も減ることがわかった。低成長が続く昨今、将来、どれくらい悲惨な状況が待っているのか、年金は本当はいくらもらえるのか、知っておくことが賢明だ。
そこで今回は、政府の試算のなかでも最も現実味のある経済成長が進まないケース(経済成長率マイナス0.5%)に従って、サラリーマンの夫と専業主婦という、政府が想定する「モデル世帯」が受け取る年金額を試算した(表参照)。
ここではあえて、将来の物価の変動は考慮せずに算出した。今のお金の価値のままならば、どれくらい年金が減るのか、どれくらいのお金で老後を暮らさなければならないかが、より実感できるからだ。
別掲した早見表を見ていただければ一目瞭然だが、若い世代になればなるほど、受け取れる年金はどんどん少なくなる。
たとえば、55才の夫の生涯平均年収が350万円の場合、65才になった時に夫婦で受け取れる額は17.5万円。現在65才の人の年金額19万円と比べると、1.5万円も少なくなる。
それだけではない。実は年金は、受給を開始してからも減額されていく。現在55才の人なら、65才から受け取り始めて、75才になる頃には15.9万円、85才では14.7万円、95才では11.3万円まで減らされる。夫婦2人分の年金額が月11万円とすれば、食費や光熱費、通信費だけですぐになくなる額だ。「年金博士」として知られる、ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さん(社会保険労務士)が指摘する。
「年金財政を支え続けるためには、少ない年金からさらに受給額を減らしたり、受け取る年齢を上げるなどするしかありません。最も可能性が高いのが後者です。現在の65才から、70才への引き上げを目指しているのは明らかです」