SさんがMさんに語った内容は、本人しかわかり得ない話だった。Sさんは高校時代、学園祭で漫才をやったり、体育祭の応援団のリーダーをやったりする人気者。“いじられキャラ”として常に周りを笑わせる校内のアイドル的存在だったが、Sさんに言わせれば、そういった立ちふるまいはすべて、彼をイジるスクールカースト上位の同級生に“やらされたもの”であり、“拒めばイジメられると思ったからやったこと”だったのだ。Yさんはいう。
「Sの話はすぐに友人に伝えましたが、みな“信じられない”と、大変ショックを受けたようでした。Sは『オレにとってはイジメ以外の何ものでもなかった』とも言っていたそうです。Mによれば、『(Sは)学生時代とのギャップが大きすぎて、完全に別人』とのことで、ウチらも『もうSに会ってもしょうがないのかもね……』と話しています」
いじられキャラというと“美味しいポジション”という印象もあるかもしれないが、中にはそれが苦痛で仕方ない人もいるということ。「イジり」と「いじめ」は語感も似ているが、それがすり替わってしまっていないか、イジり役の人間は省みる必要があるようだ。