現在、60代前半で働きながら特別支給で年金を受給している人の55%が年金カットされている(厚労省年金局調べ)。注目は年金カットされていない人が45%もいることだ。
年齢的には、フルタイムで働く体力もスキルもありそうだ。しかし、年金を減らされないために勤務時間を減らし、「年金+給料」の合計が月額28万円を超えないような“もったいない働き方〟をする人が半数近くいることが浮かび上がる。ファイナンシャルプランナー・森田悦子氏の指摘だ。
「まだまだ稼げるはずの60代前半の収入を抑えることは、老後資金不足の原因になるから得策ではありません。65歳以降に再就職して働こうと思っても、それまでより給料が高い職が見つかる可能性は低い。しかし、老後資金が足りなくなると、給料が下がっても、75歳くらいまで“細く長く”働いて生活費を賄うという選択肢しかなくなっていく」
だが、在職老齢年金のルールが変われば、年金減額を心配せず、「働ける体力があるうちにフルタイムで大きく稼ぐ」という働き方を選びやすくなる。
現在62歳の会社員A氏は雇用延長後、週3日勤務で月給を18万円に抑え、年金10万円を全額受け取り合計月収は28万円。年金の“もらい損ね”はないが、フルタイムにすれば得られたはずの給料20万円を稼ぎ損なっている。
制度改正後もB氏が同じ働き方をした場合、「フルタイム勤務で年金ももらう」働き方に比べて、給料を年240万円、65歳までの2年間で480万円の収入差がついてしまう。
これをフルタイム勤務にして60代前半に老後資金を「480万円」積み増すことができれば、老後資金にも余裕が生まれ、早期のうちに完全リタイアするかという選択も可能になってくる。