「キーエンスは、もはや製造業というより、営業専門の会社です。顧客である企業のニーズを徹底的にヒアリングして困っていることに関する情報を膨大に集め、データベース化して商品開発に活かし、今までなかったオンリーワンの製品を生み出している。類似商品が他にないので、顧客としては高くても買う。さらに同社は、同じ課題を抱えている会社に横展開して営業することで収益を伸ばしている。
製造業では、製造原価を積み上げて、そこに一定の利益を上乗せして売値を決めるのが一般的ですが、キーエンスの場合は“顧客が支払ってもいいと考える金額”から売値を決めている。
たとえば、毎年一定の割合で不良品が発生し、5000万円の損失が発生しているとします。キーエンスの検査装置を導入して不良品を未然に防げるなら、装置の原価が800万円であっても、4000万円の売値設定で売買が成立する。それが粗利益80%超の秘密なのです」(同前)
同じく粗利益が大きい業種としては、化粧品会社や製薬会社なども挙げられるが、テレビCMなどの広告費や百貨店などへの出店展開など販売費が大きく、そうした経費を引いた営業利益率となると約10%前後に落ち着くという。ところが、キーエンスの場合はこの営業利益率も突出して高いのだ。
「キーエンスの営業利益率は54%(2019年3月期)に達しています。自動車業界ではダントツの営業利益率を誇るトヨタでも8.2%(2019年3月期)で、まさに桁違いです。
キーエンスの場合、製造業者向けの事業なので広告宣伝をする必要がない。他のメーカーのように莫大な広告予算をかけてテレビCMを打ったりはしません。また一般向けの店舗展開も不要なので、販売網の整備費もかかりません。かかるのは研究開発費や人件費くらいなので、これだけ営業利益率が高いのです」(同前)
※週刊ポスト2019年11月29日号