こうした盤石のビジネスモデルを支えるのが営業を手がける社員たちであり、キーエンスは社員に対して年収2000万円という高額な給与を払っている(※注)。
【※注/『就職四季報2020年版』によれば、総合職の平均年収は1位で2088万円。ランクインした企業で唯一の年収2000万円超えで、2位の三菱商事(1541万円)を500万円以上も引き離している】
複数のキーエンスOBに取材した金融ジャーナリストの伊藤歩氏は、同社での仕事をこう評する。
「営業マンといえば、残業バリバリ、土日も勤務、『気合と根性でどうにかしろ!』というイメージがありますが、キーエンスの場合は全く違います。
勤務時間は長くない代わりに、顧客の情報を分析した極めて合理的な営業マニュアルがあり、四六時中、製品の技術や仕事の進め方について詰め込まれる。かけた電話の回数から誰と会って何を話したかまで上司にすべて報告し、指導を受けなければならない。キーエンス流の営業メソッドのもとで管理された通りに実践できる人でないとダメなので、根性と気合だけのタイプの人は必要とされません。
一般論としては、組織における『多様性』というのは重要ですが、キーエンスに関しては同じようなタイプの社員が揃っていると思われます。就職採用の面接でも、学歴は不問で、蓄積された採用のデータベースを元に、自社の適性に合う人材だけが選ばれているのです」
営業職は基本的に中途採用はなくゼロから鍛え上げる
徹頭徹尾、合理的な会社である。キーエンスに新卒で入社し、数年間働いた経験のある同社OBが明かす。
「新卒の採用面接では、センサーへの興味とか志望動機とかは一切聞かれませんでした。『説得面接』というスタイルで、たとえば、野球を知らない人という設定の面接官を、野球観戦に行きたくなるように説得するわけです。出身大学は関係なく、とにかく営業マンとしての能力があるかどうかだけを見られていたと思います。