近年、日本企業の時価総額上位は1位がトヨタ、2位がNTT、3位NTTドコモ、4位ソフトバンクGまでが不動の4強だった。ところが、去る11月1日、ある会社が時価総額9兆円を突破し、ソフトバンクGを抜いて4位に躍り出た。株式会社キーエンスである。
同社は1974年に滝崎武光氏が兵庫県尼崎市で設立した創業45年の日本企業。自動車や精密機器、半導体製造の工場などでの生産工程を自動化するセンサーや画像処理システムを手がけている。現在は大阪に本社を置き、従業員数は7941人(2019年3月期)。46か国210拠点で事業を展開し、25万社と取引があり、いまや売り上げの半分を海外が占める。キーエンスの強みとは何か。公認会計士の川口宏之氏はこう話す。
「キーエンスは自社で工場を持たず、商品の製造は安く外注しているため、粗利益(売上高から原価を差し引いたもの)が極めて高いのです。製造業の粗利益率の相場はせいぜい20~30%くらいですが、キーエンスは82.3%(2019年3月期)と突出しています」
自社製造の代わりにキーエンスが力を入れているのが、圧倒的な「営業力」だ。
「キーエンスは、もはや製造業というより、営業専門の会社です。顧客である企業のニーズを徹底的にヒアリングして困っていることに関する情報を膨大に集め、データベース化して商品開発に活かし、今までなかったオンリーワンの製品を生み出している」(同前)