マンションが傾いた
これはタワマンではないが、2015年には横浜で「マンションが傾く」という驚くべき事態が発覚した。2007年に完成、三井不動産レジデンシャルが販売した「パークシティLaLa横浜」(4棟705戸、各12階建て)で、マンションを支える基礎杭の一部が、地盤の支持層に達していないことが発覚。同時に施工業者のデータ改ざんが明るみに出た。
その後、すべての建て直しが決まり、住民には慰謝料が一律300万円、建て替えに伴う家賃補償は最大で月額30万円前後支払われることになった。だが、「お金では済まない問題も起きている」と住宅ジャーナリストの榊淳司氏は指摘する。
「仮住まいの賃貸マンションを借りようとした高齢の住民が審査に通らないケースが出たほか、転校を嫌がる学齢期の子供が、転居先から遠路を越境通学するケースもあったと聞いています」
マンションといえど、人が造るもの。瑕疵をゼロにすることはできないが、こうした欠陥の情報は表面化しにくいという。
「是正を求めて裁判を起こしても、住人に有利な判決が出るのは稀。また、マンション名が公表されることで資産価値の低下にもつながる。そのため、管理組合ぐるみで泣き寝入りしてしまうことも多いのです」(榊氏)
憧れのタワマン生活、住人には「住めば都」と割り切れない苦悩も多いようだ。
※週刊ポスト2019年12月6日号