日本株は方向感の見えにくい相場が続いているが、その一方で世界最大の時価総額を誇る米国株は絶好調だ。米国株好調の要因について、グローバルリンクアドバイザーズ代表・戸松信博氏が解説する。
* * *
事前予想に反して4月下旬に日銀が追加金融緩和を見送ったこともあり、日経平均株価は軟調な展開が続いている。今後の相場環境を見通すと、当面は大幅な上昇も望みにくいだろう。
ただ、その値動きに惑わされてはいけない。日経平均がさえない要因は、ドル安による為替の影響にほかならない。円高で輸出関連の大型株の業績が伸び悩み、日経平均の大きな重石となっているためだ。同じくドル安に伴うユーロ高で弱含みとなっている欧州各国の株価指数を見ても、それは明らかといえる。
ドル安の恩恵もあって米ニューヨークダウは最高値更新も見込む勢いだけに、世界的な強気相場は継続していると見た方がいい。
加えていえば、為替の影響を受けにくい内需関連の小型株で構成される東証マザーズ指数は4月21日に9年3か月ぶりの高値をつけるなど、もはや沸騰相場ともいえるような活況を呈している。日本株全体が不調というわけではないのである。
そこで気になるのが、世界的な強気相場を牽引する米国株の行方だろう。ここまで米国株が好調に推移してきた理由は、低金利の継続とドル安にある。
まず、米国では昨年12月にFRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を引き上げた一方で、長期金利が低下傾向にある。これは日欧の金融緩和で溢れた資金が米国債に向かうなど金利低下圧力がかかり、追加利上げ観測が後退したことが要因。それによって利上げに踏み切ったにもかかわらず、長期金利は過去5年間で最低水準に近いところまで下がり、世界的にリスク資産に資金が流れやすくなっているのだ。
また利上げ見通しの後退からドル安が進み、米国株をはじめ、ドル安の恩恵を受ける新興国株や資源価格が回復していることにも注目したい。
この追い風を受けて、不安要因だった原油価格と中国経済も復調している。原油価格は国際エネルギー機関(IEA)が「今年下半期に石油の供給過剰はほぼ解消される」といった見通しを示したことから需給面の不安が後退。中国経済も金融緩和や景気刺激策の効果がようやく出てきて、国内の資金調達総額は過去最高の貸出額となっており、不動産価格や自動車販売台数も大きく伸びるなど、経済の減速懸念が後退している。
ともあれ、この世界的なリスク志向の流れが、為替の影響を受けにくいマザーズ指数の上昇に影響していると考えられる。
※マネーポスト2016年夏号