繰り下げのデメリットは年齢だけではないという。
「繰り下げによって受け取る年金額が増えた分、税金や社会保険料が多く天引きされて、手取り金額が少なくなってしまう場合があります」(北村さん、以下「」内同)
自治体によって異なるが、たとえば東京23区や大阪市、横浜市などの大都市では、65才以上で扶養家族が妻1人の場合、夫の年金収入が年間211万円(月額約17万6000円)以下なら住民税が非課税になるうえ、健康保険料や介護保険料などの社会保険料が大幅に減免される。また、1か月の医療費の自己負担額が一定額を超えると超過分が還付される健康保険の「高額療養費制度」の自己負担上限額も、70才以上なら2万4600円までと低く抑えられる。
「逆に年金額が211万円を1万円でも超えると高額療養費制度の上限額は月5万7600円と倍以上高くなり、社会保険料も跳ね上がり手取り額は大幅に減ります」
これらの増えた社会保険料を考慮すると、繰り下げで得するのは実質81才よりもっと後になりそうだ。厚生年金の平均受給額は月額約14.7万円。ねんきん定期便を確認するなどして年間211万円以上受け取りそうかどうか確認しておいた方がよいだろう。
一方、60才から繰り上げ受給した場合は、76.8才までに亡くなれば得だが、それより生きると損をする。
「一般に、女性の平均寿命の方が男性よりも長いため、妻の年金は繰り下げて、夫は繰り上げるのがおすすめです」
一度しか選べない受給開始年齢。損しないためにも慎重に選びたい。
※女性セブン2020年1月1日号