デジタルプラットフォームの分野ではアメリカの「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に加え、中国の「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)が急激に台頭している。これにヤフーとLINEは危機感を募らせ、経営統合によってGAFAとBATに対抗できる“世界の第三極”を目指すというが、米中の巨大プラットフォーマーとは比べるべくもない。そもそも企業の「染色体」が違いすぎるのだ。
たとえば、ヤフーは積極的にM&A(企業の合併・買収)を展開し、高級ホテル・旅館の宿泊予約サイトやレストラン予約サイトなどを展開する一休、電子書籍販売・紙書籍オンライン販売サービスのイーブックイニシアティブジャパン、事務用品中心の通信販売会社アスクル、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOなどを次々と傘下に収めてきた。
しかし、これらの会社がヤフーの中で有機的に動いているのかと言えば、甚だ疑問である。様々な業種の会社を合併・買収して失速したRIZAPグループと同じで、何をやりたいのか、さっぱりわからない。「事業と屏風は広げすぎると倒れる」という経営の鉄則を忘れているようだ。
一方のLINEは、ヤフーとは対照的に事業基盤がスマートフォンの無料通話機能と1:1やグループのチャット機能だけである。同じSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のフェイスブックなどのように、執拗かつ効率的なマネタイズ(ネット上の無料サービスから収益を上げる方法)もできていない。
そんな2社が経営統合してシナジーはあるのか? ほとんどないのではないかと私は思う。唯一成功する可能性があるのは好調なスマホ決済サービスの「PayPay」と「LINE Pay」だが、今は身銭を切って店舗側の初期導入費用や決済手数料を無料にしたり、大々的なポイント還元キャンペーンを展開したりしているから拡大しているだけである。それらが終了したら頭打ち、もしくは減少に転じる懸念が強く、たとえスマホ決済サービスの覇権を握ったとしても縛り(乗り換えコスト)がないのでユーザーは囲い込めず、本当に富を生み出せるかどうかは不明である。
アリババ傘下アント・フィナンシャルの「アリペイ(支付宝)」やテンセントの「ウィーチャットペイ(微信支付)」のように、スマホ決済サービスだけでなく貯金や資産運用、融資などの金融サービスも手中に収めたモデルを追求すれば話は別だが、日本は金融規制のハードルが高いので、それは至難の業だろう。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号