この失敗は、決して見通し難いものではなかった。その証拠に、マイナス金利導入が決定された1月の金融政策決定会合の票決は、5対4の僅差である。総裁1名、副総裁2名を除いた賛成票はたったの2票しかない。
さらにいえば、賛成した2委員は、ともに金融業界の経験を持たない。金融政策に関してはほぼ素人であり、おそらく、執行部にいわれるがままに票を入れるマシーンのような存在なのであろう。
即ち、金融政策のあり方に独自の知見を有し、将来その判断の正否に職業的な責任を問われることになる業界関係者は、全員が反対票を投じたのである。
黒田総裁は、独断専行のスタンドプレーを好む。これまではそれで一定の成果も上げてきた。しかし、今後は、市場を動揺させないような丁寧なコミュニケーションを心がけて欲しい。
マイナス金利のような分かりにくい政策を、審議委員すらろくに説得できない状況で、国民に押し付けるのは勘弁願いたい。
※マネーポスト2016年夏号