◆相場のトレンドが指標発表後の値動きを左右
こうした市場予想との乖離に加え、もうひとつ発表後の相場に大きな影響を与える要因がある。これを、2016年4月1日のアメリカ雇用統計発表時の例で説明しよう。
このときの非農業部門雇用者数は、市場予想を1万人上回るまずまずの結果となった。このポジティブサプライズを受けて発表と同時にドルが買われ、ドル円レートはたちまち40銭ほども上昇した。
ここまでは教科書通りだ。しかしこの流れはわずか数分しか続かず、すぐに値を戻してしまった。これはなぜか。
指標発表後の値動きは、指標の結果だけでなく、発表直前までの相場のトレンドに大きく左右されるからだ。トレンドと経済指標の結果が同じ方向であればその流れが加速しやすいが、逆方向であれば一時的に経済指標に反応してもすぐ戻ってしまったり、反応自体が小さく終わってしまうことが多い。
4月の雇用統計の場合、直前の3月29日にイエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長が講演で追加利上げに慎重な姿勢を示したことから、相場には大きな円高ドル安のトレンドができている中での発表だった。こういう時は、雇用統計の結果が悪いとドル売りが加速しやすいので、素直にドル売りの流れについていくトレードが成功しやすくなる。
ところが、雇用統計の結果が良いと、相場は一時的にトレンドに逆らって動くことになるので、よほど大きなポジティブサプライズでない限りその上昇エネルギーは続かないことが多い。それどころか、後からその上昇分が帳消しになるほど売られたり、それ以上に下落することもあるので、流れを慎重に見極めながらトレードする必要がある。
※マネーポスト2016年夏号