──それは講義ごとの特性、あるいは通っている大学のムードも関係するものか?
Aさん:それは分かりませんが、他学部の講義を受講していてもこのムードは変わりません。偏差値から言えば、うちの大学はしっかりと大学受験を経験した学生が集まっているはずです。しかし、大学生になったとたん「真面目に勉強すると痛い」、「講義を前で受けるのは陰キャ(ネクラ)」という圧力が生じているように思う。だから、自称イケてる奴らは必ず大教室でも後ろの方の席に固まり、集団行動しているんです。
本来はもっと真面目に学問をしたい学生もいるはず。しかし、講義中にしっかりと個人の意見を言える学生はほとんどいない。教授に当てられても、「うち無理!」「俺も無理!」とマイクを押し付けあって意見を言わないという光景を何度見たことか。
学力低下以前に、「真面目に学ぶことってカッコ悪いことじゃないんだよ」という意識を共有することが大切だと思います。それを怠っている大学教授にも原因があると思います。学生をバカにして子ども扱いするからこそ、学生も教授をバカにするという悪循環です。たとえば政治学科なのに、政治の問題を語り合える空気すらない。ゼミでも沈黙が続く。それって“学力”とは別の問題ですよね。
──しかし、そういった学生も卒業するには勉強して単位を取る必要があるのではないか?
Aさん:多くの学生は、学ぶことには不真面目ですが、単位を取ることには本気です。テストやレポートの成績が悪く、単位不可になると教授の悪口を言うし、「研究室行ってワンチャン単位もらえるか脅してくるわ(笑い)」と笑っていた同級生もいます。大抵の学生にとって問題なのは、就活に“使えるか否か”です。大学の制度や学生の資質だけでなく、就職活動の制度もこうした空気を生み出す要因かもしれません。
──しっかりと学びたいという学生もいるのか?
Aさん:学年問わず、問題意識を持って受講している学生はいます。そういう人と出会えると、お互い仲良くなることもある。同じ悩み抱えている大学生は全国にたくさんいると思いますが、諦めず、周りに流されずに4年間しっかり学んで有意義に過ごしてほしいです。
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Aさんは「大学生の学力低下」それ自体よりも、その背後に潜む「真面目な学生を揶揄する同調圧力」こそが問題だと指摘する。最高学府である大学において、あらためて「学びの空間」の復権が求められているのかも知れない。