新生活が始まる春は、転職も多くなる季節。社内外の関係各所に対して、在職中のお礼や今後の連絡先を伝える「退職あいさつメール」も多く飛び交うだろう。しかし、そういったメールを煩わしく思う人も少なくないようだ。転職経験のある会社員に対し、昨今の退職メール事情を聞いてみた。
メーカーに勤務する30代の会社員・Aさんは、BCCで一斉に同報される退職メールに対し、ある違和感を覚えているという。
「TwitterやFacebook、noteなどのサービスで流行しているのが、『退職エントリー』と呼ばれる類の文章。在籍時の実績や失敗談、退職理由、そして感謝の言葉をブログ調に綴り、退職を文中で『卒業』と表現するエントリーが多いのが特徴です。そうした流れを受けてか、社内向けの退職メールでも『卒業』という表現が増えている印象です。会社を辞めることは、働いた会社との別離を意味するはず。それを “卒業”といわれると、踏み台感があるというか、モヤッとしてしまいます……」
先日外資系企業に転職した20代女性・Bさんは、退職あいさつメールを書いたものの、送れずじまいで終わったと明かす。
「新卒で育ててもらった会社から、競合他社に転職しました。これまでお世話になったお礼を長文で伝えたかったのですが、反感を買うのが目に見えていたので、結局送れませんでした……。直接顔を合わせないで事情を伝える退職メールは、送るのにも勇気がいりますね」
広告代理店に勤務する30代の男性・Cさんは、一斉送信での退職メールをもらっても、「よく知らない人から誰向けなのかわからない退職の報告を受けても、積極的な関心を持てない。その人が本当にお世話になった人なら、個別に挨拶するのではないでしょうか」と、一切目を通さないという。
PR会社勤務の40代女性・Dさんは、「退職メールがきっかけで、連絡をとったことがある」と言うが、その後モヤモヤを抱えている。
「数年前、退職メールをもらって、久しぶりに私から連絡をとったことがあります。それで一度一緒に飲んだのですが、結局次の仕事の相談をされて終わり。自分の“利”になるために、少しでも知り合いをつなぎとめておくための手段だったのかなって、少し寂しくなりました。今では、そういった退職メールをもらっても、“遠くから応援しています”という気持ちを持つだけで、積極的に連絡をとることはありません」
退職時のBCCメール、送るほうは効率的なのかもしれないが、受け取る側にはなんとも言えないモヤモヤ感が残るケースも少なくないようだ。