6月6、7日、米中戦略経済対話が北京で開催された。日本の報道を見ると、「南シナ海問題で物別れ」、「両国間協力の限界を露呈している」などといった否定的な見方が目立つ。確かに、外交面での成果は乏しいが、経済、金融面ではそうでもない。
中国財政部の朱光耀副部長は閉幕後の7日夜、主要な成果として以下の4点を指摘している。
(1)米中2国間投資協定(BIT)締結に向けて、ネガティブリストを交換する。
(2)中国側は今後、アメリカ側に2500億元のRQFII(人民元海外適格機関投資家:RMB Qualified Foreign Institutional Investors)枠を提供する。
(3)経済を振興させ、人民元の切り下げ競争を回避する。
(4)中国側が1.1~1.5億トンの鉄鋼生産能力を削減し、新たな増産を承認しない。
この中で、特に、(1)、(2)が重要である。
まず、BITであるが、これは、両国の企業が、それぞれの市場に参入する際の制限を大幅に減らし、これまで以上に開放的で、透明な市場規則を作るための協定である。
2008年6月の第4回米中戦略経済対話の中で正式に条件交渉が始まったが、金融危機が発生したため、しばらく交渉がストップしていた。しかし、2014年から、海外企業が国内に投資する場合の出資規制を示すリスト(ネガティブリスト)の作成が始まり、2015年6月には第一次のネガティブリストの交換が行われている。この時は、中国側は100以上、アメリカは20以上のプロジェクトをリストアップしている。
今回の協議によって、ネガティブリスト交換の第2弾が行われることになったのである。アメリカは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)による中国包囲網を敷こうとする一方で、BITによる中国との関係強化を模索している。いわば2面作戦であるが、アメリカの大統領候補がTPPに否定的なだけに、BITの持つ重みが増している。