「2011年6月に『LINE』をリリースした。きっかけは同年3月に起きた東日本大震災でした。ちょうど震災時に日本にいたネイバーの会長が非常時における通信インフラの必要性を感じ、便利でつながりやすいコミュニケーションツールとして開発を後押ししたといわれています」(河氏)
LINEは日本で成長した企業ではあるが、新規上場の際に提出が義務づけられている有価証券届出書を見ると、純粋な“日本企業”とは言い難い。
届出書の〈株主の状況〉を見ると、87.27%を親会社のネイバーが握り、LINE取締役のシン・ジュンホ氏が5.12%で次点となっている。社長の出澤剛氏ですら、持ち分は0.05%に過ぎない。
「役員11人のうちネイバー出身が4人。そして執行役員17人のうち7人が韓国系です。〈株主の状況〉にある名前を見る限り、少なく見積もっても96%は韓国人または日本在住のコリアン系が株主とみられ、実質的には“韓国企業”と見られています」(証券関係者)
また日本や台湾、タイなどでは高いシェアを獲得しているLINEだが、欧米での知名度は高くない。
世界における対話アプリの月間のアクティブユーザー数(2016年3月時点)は、「WhatsApp(ワッツアップ)」が10億人、「Facebookメッセンジャー」が9億人、中国の「WeChat(ウィチャット)」の7億6200万人に対し、LINEは2億1840万人に留まっている。
ちなみに親会社のある韓国では、「LINEはほとんど使われておらず、カカオトークというアプリが主流です」(在韓ジャーナリスト)というから、世界的な知名度アップは今後の大きな課題だろう。日米同時上場にもこの課題が関係していると前出の栫井氏はいう。
「米国ではLINEはほとんど知られていませんから、ニューヨーク証券取引所への上場を、米国での知名度向上の足掛かりにしようとしているのかもしれない」
※週刊ポスト2016年7月1日号