日本人男性のがん死トップを占める肺がんの早期発見には、胸部X線よりも体の断面画像を撮影できるCT検査が有効とされる。人間ドックのオプションとして「肺がんCT」が含まれることが多く、費用は全額自費の場合、1万~2万円程度と高額だ。
しかし、すべての人にとって必要かどうかは慎重に考えなくてはならない。『医者が教える正しい病院のかかり方』の著者・山本健人医師(消化器外科)が指摘する。
「国立がん研究センターもアナウンスしていますが、『胸部CTが肺がん死亡率を下げる』という根拠は十分にはありません。
呼吸器内科医が息苦しさや血痰などの症状がない人にまで自費でCT検査を勧めることはなく、あくまで胸部X線で疑わしい場合に精密検査として行なうものです。胸部CTは健康な人のスクリーニングや予防には適していません」
米国の専門学会も、肺がんCTが検診として有効なのは肺がんリスクの高い「55~74歳の過去15年にわたるヘビースモーカー(30パック年=1日1箱を30年、1日2箱なら15年の喫煙歴のある人)」だとしている。
ピロリ菌の除菌が保険適用になるか、自費診療になるか
日本人男性の罹患者数第1位の胃がん。ピロリ菌感染が発症原因の99%を占めるといわれ、人間ドックのオプション(約1000円)として血液採取によるピロリ菌の抗体検査が行なわれている。
ところが、米国臨床病理学会は、ピロリ菌感染はより精度の高い便検査や呼気検査を推奨し、血液検査は医学的に有用ではないとした。内科医で秋津医院院長の秋津壽男医師は、こう指摘する。
「ピロリ菌の感染があれば治療として除菌薬を飲みます。日本の制度では血液や便検査でピロリ菌が見つかると除菌に保険が適用されず自費診療ですが、胃カメラ検査で見つかると保険適用になります。
そもそもピロリ菌抗体を調べる血液検査は除菌後にも一定期間陽性反応が出ることからあまり当てにはなりません。ピロリ菌の活動の強さがわかる呼気検査か、組織を採って顕微鏡でピロリ菌の現物を確かめる胃カメラ検査がいいでしょう」
※週刊ポスト2020年5月8・15日号