「テレビ誌らしからぬテレビ誌」や「サブカル雑誌になぜかテレビ番組表がついている」と評され続けてきた雑誌『TV Bros.(テレビブロス)』(東京ニュース通信社)が、今年2月発売号(2020年4月号)をもって、約33年続いた定期刊行の歴史を終えた。今後はウェブ版および不定期刊行で展開され、4月24日には「いつまでもあると思うな 親とブロス」と題された総集編特大号も発売されたばかりだ。
ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、2001年から2005年まで同誌のフリーの編集者として携わっていたが、いまあらためて、「ブロスにかかわれて本当に良かった」としみじみと述べる。中川氏が、作り手側から見たテレビブロスの思い出と、数々の珍事件を振り返る。
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4年間ブロスの編集者をやりましたが、広告主を激怒させる、という不祥事を起こし辞めた私としても、本当に素晴らしい4年間を過ごせたと思っています。多数の特集を作り、連載コラムの担当もさせてもらいました。担当したのは片桐仁さん、光浦靖子さん、キリングセンス(河崎健男さん・萩原正人〈現・ハギワラマサヒト〉さん)の3組です。
今、私は「ネットニュース編集者」を名乗り、2006年からネットで多数の記事を編集・執筆し続けてきましたが、そのベースにあるのは間違いなくテレビブロス時代の編集経験です。毒舌も罵詈雑言もバカ過ぎる内容も含め、散々企画を出してきたのですが、何がウケるか、何が叩かれるか、といった感覚は、ブロスの4年間で培ったものが大きいです。ただし、ブロスの読者はなんだかんだいってサブカル好きだし、感覚がぶっ飛んでいる人も多いので、ブロス的な感覚でネット記事を出し続けていた時はけっこう炎上しました。
その時、「ありゃっ、ブロスの感覚ってやっぱ世間とは違っておかしかったんだな……。やっぱり世間はテレビガイド的な無難な人が多いんだな」ということに気づき、以後、ネットの世界では“ブロス的”なものは若干封印しつつも、時に何パーセントかは「テレビガイド的」な品行方正で誰にも叩かれないような空気感を無理矢理作り上げてきました。だから、私自身は、2007年以後は決定的にヤバい炎上はしていないんじゃないかな、と思います。