アフターコロナ時代を迎えて大学受験の常識が一変する――。受験の動向に詳しい大学通信常務取締役の安田賢治氏はこう指摘する。
「もともと、好景気の時は文系の人気が高く、不景気になると卒業後の就職を視野に入れて理系の志願者が増える傾向があります。そのため2008年秋のリーマンショックで就職が厳しくなり、事務職の採用が減ると文系人気が下がっていたが、景気が回復した2015年頃からは文系人気が上昇に転じました」
その流れからいくと、コロナ後の不況下では、理系の志願者が急増するわけだが、“これまでの不況”とは違う変化が起きるとみられている。
「リーマンショックのときは、理系の中でも国家資格と直接結びついている医師や歯科医、薬剤師、看護師など医療系の学部の人気が高かった。しかし、今回のコロナでは院内感染も多かったので、医学部系進学に二の足を踏む受験生も多いかもしれません」(同前)
かわって受験生が集まりそうなのが、情報系の学部だという。
「コロナ禍で『オンライン授業』が行なわれはじめたことにより、『ICT(情報通信技術)』への興味が高まっています。AIも注目を浴びている。今回の危機をきっかけに、ますます人気を集めるでしょう」(同前)
そもそも、好景気の時に文系人気が高まるのには、こんな理由がある。
「人は易きに流れますからね。理系は出席、実習、成績なども厳しく、学会の発表などでも英語を使うように言われることもある。遊んでいる暇もないし、バイトもできないということで、“文系のほうが楽そうだ”というイメージがある。これからは、そんなことをいっていられなくなるでしょう」(同前)
これまでは文系を選ぶ学生の多さなどを背景に、上場企業の社長の出身学部を見ても、“文系支配”が圧倒的だった。コロナ後の日本社会では、そうした社会構造にも変化が生じる可能性がある。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号