緊急事態宣言が発令された4月以降、経済的な打撃を最も被ったとされたのは、個人事業主やフリーランスだった。仕事がなくなり収入がゼロになる人や、約2か月に及ぶ営業自粛で廃業に追い込まれる飲食店も数多くあった。
一方、毎月の給料が支払われる会社員の収入減が話題に上ることは少なかった。しかし、サラリーマンの給料にも、コロナ禍は大きく影響していた。
毎月勤労統計調査(従業員5人以上)によると、4月の実質賃金は前年同月比0.8%減。残業代を中心とする所定外給与は同12.8%減と、比較可能な2013年1月以降で最大の下げ幅を記録した。
自動車メーカー・ホンダでは、4月から全社的な在宅勤務を開始して以降、残業時間が減った社員が出始めた。商品企画部門に勤める40代男性が肩を落とす。
「コロナ以前は、長時間のミーティングで日中の作業時間が足りず、月30~40時間の残業が当たり前で毎月8万~10万円の残業代がついていました。
しかし、4月からテレワークに移行すると残業がほぼなくなり、そのぶんが手取りからまるまる減ってしまった。会社は今後もテレワークを推奨し、出社率を減らす数値目標も打ち出している。海外出張はもちろん、国内出張の自粛傾向も続いており、出張手当や残業代の減少が続くでしょう」
こうした傾向はホンダに限らず、自動車業界全体に当てはまるという。自動車業界に詳しい経済ジャーナリスト・福田俊之氏が解説する。
「トヨタ、日産なども含めて、自動車業界では多くの社員が『基本給+残業代』という給与形態で働いています。そのため、普段から残業が少ない部門で働いていた人を除き、残業代が減ったという社員は多い」