もっと言えば、17兆円の運用損が生じたのは「年金積立金」の部分の話。原則65才以上の人達が受け取っている公的年金は、働いている現役世代から集めた保険料と、国庫から負担する税金、運用による年金積立金の3つから支払われているが、このうち年金積立金が占める割合はごくわずか。2018年度で見ると、公的年金の支払い総額約53兆円の内訳は、現役世代から集めた保険料が約38兆円、国庫負担の税金が約13兆円、年金積立金は約2兆円と1割にも満たない。
つまり、年金積立金の運用で大きな損失が生じたからといって、それが直接的な原因で年金が破綻したり、年金の受取り額が急激に減らされたりするような事態には、なりようがないのだ。
とはいえ、厚生労働省は約30年後には年金水準を今より2割程度低くする見通しを示しているし、少子高齢化で現役世代が減っている今、年金の支払い原資のうち年金積立金の割合はもっと高くなっていくだろう。手放しで楽観はできないが、「損失」という一つの側面だけを見て全てを悲観したり、一喜一憂することも賢明ではないことを知っておきたい。