人生100年時代、初めて迎える超高齢化社会を突如コロナが襲い、これからの生き方に迷いを持つ人も多いではないだろうか。『還暦からの底力 歴史・人・旅に学ぶ生き方』(講談社現代新書)の著者で、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さん(72才)と、『70才のたしなみ』(小学館)の著者で、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さん(74)が、コロナ禍の新しい生き方について語り合った。2人は「性別・年齢の壁から自由になろう」「一生働くことは動物として自然なこと」と考える。
出口:残念に思うのは日本では女性の社会的地位が低いことです。ジェンダーギャップ指数において日本の女性の順位は先進国で最低水準の121位。しかも過去最低です。昨今、世界的主流を占めるのはサービス産業ですが、そのユーザーの7割が女性です。ところが日本経済を支えていると自負する男性を集めて、「女性が求めるものがわかりますか」と質問しても誰も手を挙げません。日本を元気にするには女性の底力が必要なんです。
坂東:出口先生はいつもそうおっしゃってくださって大変うれしいのですが、世の男性は女性の活躍を歓迎しませんよね。とても保守的で、女性の活用と口では言いながらも、安定している今の環境を手放したくないのが本音です。
出口:ぼくはまだ学長として3年目ですが、春・秋で4回卒業生を送り出して、総代はすべて女性でした。
坂東:わぉ、すばらしい。
出口:APUは男女比がほぼ半々なのですが、トップはすべて女性。いかに女性が優秀であるかがわかります。それなのに女性の社会的地位は121位です。日本では、明治以降、男尊女卑の地盤がある上に、戦後の性分業がそれに拍車をかけた。性差別については男性も女性も意識を変えていくべきだと思います。
ぼくは歴史が好きなのですが、日本も江戸時代までは女性の地位がものすごく高かったんです。
坂東:特に町人や農民で高かった。
出口:武士の世界でも高くて、徳川家の世襲問題で紀州藩の吉宗が八代将軍の座に就いたのは天英院の鶴の一声だったともいわれています。