ETF(上場投資信託)は、いわゆる上場していない一般的な投資信託に比べ信託報酬(投資信託を保有している間、日割り計算で差し引かれる手数料)がおおむね低いことから、より長期投資に向いている金融商品と言われる。
では実際に長期投資をした場合、一般的な投資信託に対しETFがどのくらい有利に働くものなのか、いずれも日経平均株価指数(日経225)に連動するタイプの投資信託(インデックス型投資信託)とETFを例に検証してみた。
まずは両者の信託報酬を比較すると、日経225に連動する投資信託が平均0.78%なのに対し、同じく日経225に連動するETFは平均0.25%であった。中には、ETFよりも低い信託報酬で運用されている投資信託もあるものの、平均値では0.53%の差でETFの方が低コストとなっていることが分かる。
それでは上記の信託報酬率に基づいて、両者の最終的な獲得利益をシミュレーションしてみよう。仮に100万円の資金を年平均2%のリターンで運用したとする。便宜的に信託報酬が1年ごとに差し引かれるとした場合、同じく日経225に連動する投資信託とETFの獲得利益は以下の通りだ(計算事項の定義については記事末尾に掲載)。
■日経225に連動する投資信託
1年間:12200円
5年間:62507円
10年間:128920円
■日経225に連動するETF
1年間:17500円
5年間:90617円
10年間:189444円
上記のデータから分かる通り、両者の差は1年間で5300円、5年間で28110円と年々拡大していき、10年間では60524円まで広がった。前提条件である運用資金の額や、年率リターンの水準が増えた場合、この差はさらに大きくなるだろう。
もちろん信託報酬は運用を行う上で必要なコストであり、低ければ低いほど良い商品というわけではない。若干コストが高めの商品であっても、その分大きなリターンを期待できる商品もあるだろう。
また、個別の商品を見ればETFよりもコストの低い投資信託もあるので一概には言えない部分もある。とはいえ、金融商品としての特性から考えれば、よりコストの低いETFのほうが、長期投資に向いていると言えそうだ。
【各計算事項の定義】
■ETF:投資信託協会のデータベースに登録されているETFの中から、日経225を投資対象とする、運用開始後1年以上のETFを選出。レバレッジ型やインバース型などの特殊な形式は除く。
■投資信託:DC(確定拠出年金)やSMA(ラップ口座)用ファンドを除いた「インデックス型」と分類される非上場の投資信託の中から、日経225を投資対象とする、運用開始後1年以上の投資信託を選出。
■信託報酬額:通常は日割り計算で投資資金から差し引かれるが、計算を簡略化するために1年ごとで計算。
(※その他、取引にかかる手数料や税金等の諸経費については考慮していない。獲得利益については、再投資するものとする。本数値は2016年7月8日時点のデータであり、今後、商品の新規設定や改廃等により変動することがある)